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海を飛ぶ夢【MAR ADENTRO】The Sea Inside

スペイン人監督アレハンドロ・アメナーバルが「尊厳死」に真っ向から
取り組んだ映画です。今までよく使われていた「安楽死」という言葉を
使うと、死にたいと願う人を死なせてあげること=死に方を考えること、
というイメージになってしまうのに対し、尊厳死というのは尊厳ある生
き方とは何ぞ?を問うことなのだなぁと気づきました。尊厳ある生をど
のように全うするかが重要。本人だけでなく周囲の人々の尊厳をも考え
させられることになります。




主人公のラモンは25歳の時に海の事故で首から下が不随になり、以来
30年も寝たきり生活を送っている中年男性。養ってくれてるのは兄。
兄嫁、甥っ子、年老いた父親などが分担して身の回りの面倒をみてくれ
ていて、田舎家でオペラを聴いたり文章を(口で)綴ったりしながら
ひっそり暮らしています。家族の愛に包まれているラモンですが、実は
死を望んでいて、尊厳死を支援してくれる団体とコンタクトを取ったり
しています。家族にとっては辛い。とりあえずラモンはひとりでは何も
できない体なので自殺もできない。けど死にたいという意志は強く、そ
の強さでいつか本当に逝ってしまうんじゃないかと、家族は不安に思っ
ているわけです。ラモンの態度にキレた兄が「お前のために犠牲になっ
てきた家族を踏みにじる気か」みたいな愚痴をこぼします。愚痴という
より喧嘩ごし。けどラモンはひるまない。自分が生かされているという
遠慮とか気遣いとか卑屈さがなく、ただ自分の自由を主張する堂々とし
た態度。ここが一番胸に痛かった。どちらの考えもまっとうだし対立は
堂々巡りするばかり。尊厳死問題の難しさです。

とテーマの重さばかりを強調してしまいましたが、監督が「これはラブ
ストーリーだ」と言っているように、ロマンチックな側面をたくさん持
つ映画でもあります。ラモンがいつも夢想する海の美しさや、家族の愛、
それから複数の恋が描かれていて、死より生きることを謳っている。

ラモンは法的に尊厳死を勝ち取るべく弁護士を雇うのですが、その女性
弁護士フリアと恋に落ちてしまう。さらにラモンに憧れを抱くロサとい
う女性まで現れてモテモテ状態。パンフによりますと実物のラモン(な
んと実話が下敷きになっているのでした)もハーレム状態のモテ男だっ
たとか。生まれ持った聡明さ、ユーモア、厳しさなど女性の心を掴むも
のがあったのでしょうか。フリアやロサのような心の傷や寂しさを持っ
た女性にとって”いつもそこに居てくれる”ことが心地良かったという
のもあるんだろうなぁ。ラモンは世話されて生きてるというより、自分
の才能や人柄によって周囲を幸せにしている存在。だからなおさら皆は
彼の死の願望を受け入れがたいのです。

カトリックの問題も絡み、国中が注目した社会的事件を、あまり大きく
描かずラモンの身の回りの人間に絞って描いているところが良かった。
見ている間じゅうずっと頭の中がフル回転してました。ラモンに触発さ
れて普段考えないことをイロイロ考えたり。

そして実はこれが一番のトピックだったりするのだけどラモンを演じた
ハビエル・バルデムが超カッコイイです。いかにもラテン男なセクシー!
といってもバンデラス的じゃなくピカソ的セクシーのほう。まなざしが
たまりません。スクリーンでは本当の50代に見えたのだけど実際は30
代半ば。老けのほうがいいかも?


by aundo2005 | 2005-06-23 20:07 | Movie