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トニー滝谷

宮沢りえちゃんって洋服の着こなしが綺麗だよね。
ドレスでもカジュアルでも自分のものにしていて自然だなぁと思うのです。
そんなりえちゃん演じるA子は買い物依存症。
「服を着るために生まれてきたような」彼女は、きれいな服を見ると
買わずにはいられなくなり、家の中は次第に服の山となっていきます。
服をとっかえひっかえ着替えるようなシーンはないのだけど、
ブティックのドアを押し、軽い足取りで洋服を選んでいくシーンなど
さすがりえちゃんだなぁという美しさ。
でもA子ときれいな洋服たちとの蜜月は長くは続かないのでした。




原作は村上春樹の同名小説です。村上春樹の小説には「働かない人」や
「閉じられた世界で生きてる(働いてる)人」がよく出てきますね。
トニー滝谷もそう。子供の頃から孤独に暮らし、絵が上手だったトニーは
イラストレーターになり、ひとりの事務所で黙々と仕事をこなしていました。
孤独が平気、というかむしろ好き。みたいなトニーでしたが、
A子と出会い一緒に暮らすようになってからは、孤独に戻ることが恐くてたまらなくなります。

村上さんは孤立している人の幸福感みたいなのを魅力的に描くから、
私はいつもその世界にちょっぴり憧れるのだけど、
物語的にはそういう幸せな孤独は壊されることになっている。
一人称で描かれていた幸福感は、第三者の視点によって歪んで見えたり
陳腐なものに貶められたりするのですね。感情移入たっぷりの私は
すごく打ちのめされてしまいます。リアルなんですもの。
市川準監督なのでじんわり優しい世界かなと思って見てみたら、
かなり村上色のきつい映画でした。
でも主役の2人(イッセー尾形・宮沢りえ)がそれぞれ二役していたり、
最低限のセットだけで撮影されていたり、映像的な面白さも結構ある作品です。

さてトニーが再び孤独に陥った時にとった行動というのがかなり興味深いのですが、
その面白いところを予告編でバラした配給関係者?予告編作る人?
良心が欠如しています。


by aundo2005 | 2005-05-12 12:54 | Movie